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BOMとは? 基礎知識から作成方法や注意点まで徹底解説

執筆者:レクサー・リサーチ マーケティング 園田 舞(そのだ まい)

BOMとは? 基礎知識から作成方法や注意点まで徹底解説

本記事では、BOMの概要から作成方法、使用や管理の注意点について解説します。

BOMとは?

BOMとは何の略?

BOMとは、「Bill of Materials」の略称で、日本語では「部品表」や「部品構成表」と呼ばれます。主に製造業で使用されますが、建設業、ソフトウェア開発などの業界でも使われています。

BOMの概要

BOMは、製品やプロジェクトを構成するすべての部品や材料のリストを指します。BOMにはすべての部品や材料の名称、番号、数量、種類、仕様などの基本情報の他、1つのユニットを作るのに必要な部品の総数、各部品(またはユニット)のコスト、サプライヤーなどの関連情報も含まれます。BOMは製品の設計、生産、管理に至るまで必要不可欠なデータです。製品の構造や仕様を明確にし、業務効率化と品質確保に貢献します。

BOMの種類

BOMは各業界や使用目的に応じて様々な種類があります。一般的には各部門や異なるプロジェクトの段階に応じて、各種BOMに必要な情報を管理しています。

製造業におけるBOM

製造業で使用されるBOMには主に以下の4種類があります。

EBOM(Engineering Bill of Materials)

EBOMは主に製品設計部門で使用されます。EBOMは製品の機能や仕様に基づいて、各部品や材料をリストアップする他、関連する図面や仕様書などの情報が記載されます。製品の設計者やエンジニアが製品の構造や部品の関係性を明確にするために使用します。

MBOM(Manufacturing Bill of Materials)

MBOMは製造部門で使用されます。MBOMに実際の製造工程に必要な部品や材料を示す他に、製品の加工や組み立て工程、治具、材料の手配方法、部品の配置などが含まれます。生産担当者、製造工場の作業者が使用し、製品の製造および組み立てを指示します。

SBOM(Service Bill of Materials)

SBOMは製品のメンテナンスや修理サービスのために使用されます。SBOMは製品が市場にリリースされた後、保守や修理などのアフターサポートのために使用されます。製品の各部品や材料、必要な工具、交換部品の他、保守や修理の手順、サービスマニュアル、トラブルシューティングなどの情報が含まれることがあります。SBOMは製品の保守や修理を行うサービスエンジニアや技術者が製品の構成を把握し、適切にメンテナンスや修理を行うための情報源として活用されます。

PBOM(Purchasing Bill of Materials)

PBOMは製品の調達や生産段階で使用されます。PBOMは生産に必要な部品や材料の仕入れに関連する価格、納期、手配数などの情報が含まれます。主に資材の購買部門が、部品や材料の仕入れを計画し、製品の生産を管理するために使用されます。

これらBOMは製造業において製品の設計から製造までの全体的なプロセスを支援します。BOMを使用する事で、製品の部品や材料を正確に把握し、効果的な在庫管理を行うだけでなく、製品の改良や変更を行う際の重要な情報となります。

建設業におけるBOM

建設業におけるBOMは、建築物や構造物の建設や改修などの建設プロジェクトに必要な材料や部品のリストです。BOMには以下のような情報を含みます。

  • 建築材料: 建築に必要な材料(例えばコンクリート、鉄骨、木材、石材、断熱材など)
  • 部品と設備: 建築物や構造物に組み込まれる部品や設備(例えば、窓、ドア、配管、照明器具、エレベーター、給湯器など)
  • 数量と仕様: 各材料や部品の寸法、品質、耐久性などの仕様や数量。
  • 施工手順: 各材料や部品の取り付けや施工方法の詳細。建設プロジェクトの進行に合わせて、施工手順が記載されることがあります。
  • 費用見積もり: 各材料や部品の見積もり費用。建設プロジェクトの予算編成やコスト管理に役立ちます。

建設業におけるBOMは、建設プロジェクトの計画、設計、調達、施工の段階で使用されます。BOMを作成する事で、材料や部品の調達と管理を効率化したり、設計や施工の進行を円滑にしたり、コスト管理を行い予算内でのプロジェクト完了に役立つ事が出来ます。

ソフトウェア開発におけるBOM

ソフトウェア開発におけるBOMは、ソフトウェアアプリケーションを構成するコンポーネントやライブラリ、ツール、製品に関連する他社のソフトウェアなどのリストです。以下に、ソフトウェア開発におけるBOMの主な側面を説明します。

ある機能を実現するために部品化されたソフトウェアを指す

  • コンポーネントと依存関係の管理

BOMはソフトウェア製品を構成する複数のコンポーネントを一覧化し、各コンポーネントのバージョンや依存関係を明確にします。これにより、開発者はソフトウェアの構成要素を把握し、開発プロセスを管理することができます。

  • オープンソースコンプライアンスの確保

BOMはソフトウェア製品に関わるオープンソースコンポーネントを識別し、ライセンス情報や著作権情報を提供します。これにより、開発者はオープンソースコンポーネントのライセンス条件を遵守し、コンプライアンスを確保することができます。

  • セキュリティと脆弱性の管理

BOMはソフトウェア製品に含まれるコンポーネントを明確にし、セキュリティ上の脆弱性を特定するのに役立ちます。開発者はBOMを使用して、ソフトウェア製品に関連する脆弱性やセキュリティリスクを評価し、適切な対策を実行することができます。

  • ライセンスとコスト管理

BOMはソフトウェア製品に含まれるコンポーネントのライセンス情報を提供します。これにより、開発者は各コンポーネントのライセンスコストを把握し、プロジェクトのライセンスとコスト管理を行うことができます。

ソフトウェア開発におけるBOMは、ソフトウェア製品の構成要素を明確にし、開発プロセスを効率化し、コンプライアンスやセキュリティの確保、コスト管理を支援する重要なツールです。

BOMの作成方法

手作業での作成方法

BOMを手作業で作成する場合、一般的な手順は以下のようになります。

1.部品のリスト化

最初に、対象となる製品を構成するすべての部品をリストアップします。製品の設計図や仕様書を参照して、部品の名称、番号、数量、仕様などを確認します。

2.部品の識別

各部品に固有の識別子を割り当てます。部品の名称、番号、サイズ、規格などの詳細情報を定義します。部品を識別する事によって、後で部品を追跡しやすくなります。

3.階層構造の定義

製品が複数の階層で構成されている場合、親部品と子部品の関係を定義します。階層構造を明確にすることで、部品の組み立て順序や構造が把握しやすくなります。

4.リストの作成

部品リストとその詳細情報を作成します。手書きで作成する場合には紙またはExcelを使用される事が多いです。部品名とその詳細情報を表形式で整理してリスト化し、部品の情報をすべて記入します。

5.整理と確認

 BOMを作成したら、情報が正確であることを確認し、必要に応じて整理します。部品が正確にリストされ、階層構造が適切に定義されていることを確認します。

手作業でBOMを作成する際は、部品の情報収集とリストトアップを正確に行うことが重要です。また入力ミスなどないよう十分に注意し、定期的な更新と確認を行う必要があります。

専用ソフトを使った作成方法

BOMの作成に専用ソフトウェアを使用する場合、一般的な手順は以下のようになります。

1.ソフトの選択

 BOMを作成するためのソフトウェアを選択します。市場にはさまざまなBOM管理ソフトがあるため、ニーズや予算を考慮し最適なものを選びます。なお製造業では、CADソフトやERPシステムを使用してBOMを作成および管理することが一般的です。また生産管理システムと連携したものも多数あります。代表的な部品管理システムは、Celb 、PTC Windchill、PowerBOM、rBOMなどがあります。

2.部品情報の入力

BOMシステムに部品の名前、番号、数量、仕様などの部品情報を入力します。手動で追加する場合もありますが、多くの場合、CADファイルや部品ライブラリから直接インポートすることもできます。ソフトウェアによっては、部品の詳細情報や図面を添付することもできます。

3.階層構造の設定

製品の階層構造をソフトウェアに設定します。親部品と子部品の関係を明確にし、製品の構造を正確に表現します。これによりリストが整理され使いやすくなります。

4.部品の追加と編集

必要に応じて部品を追加したり、既存の部品情報を編集したりします。

5.バージョン管理

BOMのバージョンを管理します。プロジェクトの進行に合わせてBOMを更新し、過去のバージョンとの比較も行うことができます。

6.レポートの生成

BOMのレポートを生成します。部品リストや構造図など、必要な情報を含んだレポートを作成し、関係者と共有します。

専用ソフトウェアを使用することで、BOMの作成プロセスを効率化し、正確性を高めることができます。これにより部品情報の管理やプロジェクトの進行状況の把握がしやすくなります。

BOMの管理方法

BOMの管理方法は、サマリ型とストラクチャ型の2つのアプローチがあります。

サマリ型

サマリ型は、製品を構成する部品や材料を並列に一覧にしたリストです。各部品や材料の名称、数量などの基本情報を記載し、その他詳細情報は含まずに別のドキュメントやデータベースに保存します。製品全体のコストや構成を把握するのに役立つため、製品のコスト見積りや計画段階で使用されることが多いです。

ストラクチャ型

ストラクチャ型は、製品の部品や材料を階層構造で示したリストです。各部品や材料が親部品と子部品の関係で整理され、製品の階層構造を明確にします。製品の設計や製造プロセスにおいて、部品間の関係や組み立て手順を詳細に把握するのに役立つため、加工順序の決定やリードタイム、予定工数の計算などに使われます。

部門や目的によってサマリ型とストラクチャ型を使い分けて管理します。

BOMの役割とシステム化によるメリット

BOMとは? 基礎知識から作成方法や注意点まで徹底解説

役割

BOMは、製品開発および製造プロセスにおいて重要な役割を果たします。主な役割は以下が挙げられます。

製品の構成の定義

BOMは製品がどのように構成されているかを明確にします。製品を構成する部品や材料などを一覧化し、製品の全体像を把握するのに役立ちます。

製品の設計と開発の支援

製品の設計段階では、BOMが設計プロセスを指針として製品の構成を決定するのに役立ちます。開発部門はBOMを使用して部品の選択や仕様の決定を行い、製品の開発を効率化します。

生産スケジュール立案の支援

部品の組み立て順序や工程ごとの部品の準備状況などBOMの情報を参考に、製品の生産ラインや工程の計画を立てることができます。BOMが示す部品のリストと数量を元に製品の生産リードタイムを見積もり、生産完了日の予測や納期管理を行う事が出来ます。

品質管理と品質保証

BOMが製品の部品や材料の詳細情報を提供することで部品の仕様が一致しているかどうかを確認し、製品の品質を保証するための基準として活用されます。

在庫管理と調達

BOMは部品のリストと数量を含んでいるため、在庫管理や調達においての情報源となります。製品の部品や材料の在庫状況を正確に把握し、必要な部品を適切な時期に調達し、在庫数の調整に役立ちます。

コスト管理と予算管理

BOMは製品のコスト管理や予算管理に役立ちます。リストを元に、製品ごとに使用されるすべての部品や原材料の合計値を計算することにより、売上原価を決定するのに役立ちます。また製品の生産コストを算出し、予算を作成、資金計画を立案することができます。

サプライチェーンマネジメント

製品の部品や材料のリストを共有することで、サプライヤーとの協力や物流の調整を容易にします。また、製造される製品とサプライチェーン・プロセスの両方を文書化することで、監査や規制への準拠に役立ちます。

システム化によるメリット

BOMをシステム化することには以下のようなメリットがあります。

正確性アップ

BOMシステムを使用する事により紙やExcelなどの手で作成されたものよりも正確性が高くなります。記載漏れや誤入力などのミスを減らし、部品や材料の情報を正確に管理することができます。

情報共有をスムーズにできる

BOMのシステム化で複数部門の利用者がリアルタイムでアクセスでき、情報を一元管理できるため、情報共有が容易になります。設計者、製造担当者、調達担当者などが必要な情報にアクセスし、最新の仕様変更や在庫状況などの状況を把握できます。

バージョン管理の簡素化

BOMシステムでは、追加変更などの履歴が追えるためバージョン管理が容易になります。変更履歴の確認や、過去のバージョンと比較することができるため、誤った情報を使用するリスクが低減します。

作業効率アップ

BOMシステムを使用する事で手動での入力作業やデータの整理作業が不要になり、時間と工数を短縮できます。またデータの検索や流用が容易になるため調達や生産管理などの業務効率を大幅にアップする事ができます。

他システムとの連携が可能

ERP(Enterprise Resource Planning)システムやPLM(Product Lifecycle Management)システムなどと連携することで、製品開発から製造、販売、サービスまでの全体のプロセスを統合的に管理することができます。

これらのメリットにより、BOMのシステム化は企業の製品開発や製造プロセスの効率化や品質向上に貢献します。

BOMの注意点

BOMを使用・管理する際には、以下のような点に注意する必要があります。

正確性を保つ

BOMに含まれる部品や材料の情報は正確である事が重要です。誤った情報が含まれると、製品の製造や品質管理に問題が生じる可能性があります。情報の入力や更新には注意が必要です。

適切な更新管理

製品の設計や仕様が変更された場合、BOMもそれに合わせて更新する必要があります。BOMの更新を追跡し、古いバージョンのBOMが誤って使用されないように注意が必要です。

セキュリティの確保

 BOMには機密情報や知的財産が含まれる場合があります。必要な場合にのみ関係者がBOMにアクセスできるようするなどアクセスを制限し、情報漏洩を防止する対策が必要になります。

部門の連携

BOMの管理には複数の関係者が関与する場合があります。設計者、製造担当者、調達担当者など、様々な部門間でのコミュニケーションと情報共有がBOMの正確性と効果的な管理に不可欠となります。

データのバックアップ

BOMは重要な情報を含んでいるため、データのバックアップを定期的に行うことが重要です。意図せぬデータの損失や破損を防ぐために、定期的なバックアップとデータの保護策を確保することが必要です。

これらの注意点に留意することで、BOMの利用をより効果的に行うことができます。

まとめ

BOM(Bill of Materials)は製品を構成する部品や材料をリスト化し、製品開発から製造、品質管理、コスト管理までを支援する重要なデータです。製品の構造を明確にし、生産業務を効率化、また品質とコストを最適化するなどの役割を果たします。手作業およびソフトウェアにて作成できますが、どちらも管理には正確性とデータを最新に保つ事が不可欠となります。BOMをシステム化する事で情報の一元管理ができ業務効率化ができます。

記事発行日: 2022年7月15日  最終更新日: 2024年3月26日