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MES(製造実行システム)導入におけるメリットとは:MES導入効果について解説

執筆者:レクサー・リサーチ マーケティング 山上玲奈(やまがみ れいな)

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MESシステムのメリット・導入ステップとは

Manufacturing Execution System

この記事では、MES(製造実行システム)を導入することで、従来の工場経営において、課題とされていた点を解消できるということをお伝えします。また本記事を読むことで、そもそもMESとは、から始まり、多くのメリットがあることを理解していただけると思います。

MES(製造実行システム)について

MES(Manufacturing Execution System)とは、工場の生産ラインにおけるすべての製造工程をコンピュータで連携させたシステムです。このシステムにより、製造業者はオペレーションの細部までリアルタイムで監視することができます。MESは、ERPと組み合わせることで、日本の製造業の企業が増大する人手不足に対応し、デジタル化を加速させるのに役立ちます。

 

MESとは?MESとは何か、どのように自社の環境に適用できるのか、基本的な内容については下記コラムにもわかりやすく解説しています。

1960年代、企業は変化する市場環境に柔軟に対応することで、競争優位に立てる事を認識しました。つまり、顧客の要求や製品の状況に関する最新の情報を得ることで、企業は適時に意思決定を行い、結果として競争優位を獲得することができるのです。市場環境への柔軟な対応には、自社の製品の製造・在庫状況をわかりやすく管理することが必要です。MESモデルによる情報管理は、このような自社の管理に対して有効なツールです。

 

MESのコンセプトは、自動車物流や通信・銀行などのサービス業など、幅広い産業で活用することができます。元々は最も一般的な用途である製造業(メーカー、倉庫、配送センター)で使用されていましたが、あらゆる生産環境、現場で適用することが可能です。

MES導入のメリット

Manufacturing

MESの導入が成功すれば、そのメリットは広範囲に及びます。いくつかの例を挙げます。

まず、全てのメリットの前提としてあるのが、トレーサビリティの確立です。

トレーサビリティとは、製品や部品の流通経路をシステムで管理することで、生産段階まで一気通貫で追跡可能である状態を指します。各製造工程での生産実績をデータとして把握することで、作業者・設備の稼働状況や、生産にかかる総リードタイムの測定が可能になります。

トレーサビリティが確立されることで作業者の経験値に依存した工場管理から脱却し、以下のメリットを得ることが出来ます。

製造コストの削減

MESを導入することで、製造ラインを改善するのに役立つ可能性があります。個別に使用されていた各製造ラインの管理システムを統合することで、作業状況や在庫の各工程の状況をリアルタイムで把握できます。また、進捗についても人による管理よりも正確に管理でき、工程全体のスケジュールの予測を行うことで、 作業者の経験だけでは見過ごしてしまう「ムリ・ムダ・ムラ」をあぶりだし、効率的な生産ラインへの改善の打ち手を考えられるようになります。 

リアルタイムな部門間連携が可能

事務所からの各工場への連絡をメールでしたが、担当者が不在で工場内で周知されていなかった。など、情報共有の面は製造業の大きな悩みの一つではないでしょうか。

MESを導入することで、事務所も工場も同一のシステムを閲覧することが可能になります。

これによって、生産計画などの判断を事務所と連携した形で、迅速かつ効率的に実行できます。また、同じシステム下であれば、仕様変更などが生じた場合の、部門・工程間の連携や伝達・指示の転記・作業者への展開といった間接工数も削減することもできます。

的確かつ臨機応変な対応が可能

リアルタイムに作業者・設備・原材料の使用状況を監視することが出来るため、製造現場の「今」の情報を知ることができます。 設備の負荷状況や納期管理を常時把握することで、限られた生産資源を状況に応じて最適化し、コスト管理と業務の効率化、生産性の向上を図ります。 また、蓄積した各設備や作業工程にかかる時間などのデータを比較・分析することで、異常値の発生を迅速に検知でき、不良品発生の防止や品質の標準化を可能にする仕組み作りにも繋がります。

ノウハウの蓄積・共有

少子高齢化による人手不足や技術継承は、製造業に限らずですが、近年の大きな課題の一つです。質の高い日本のモノづくりを支えてきたのは熟練技術者ですが、今までの口伝に近いノウハウの伝承を続けていては、技術の属人化や若手育成にかかる時間の長期化などの状況は改善されません。

MESを導入することで、熟練技術者のノウハウをデータとして蓄積し、工場全体で共有することができます。例えば、各工程の作業手順や方法、注意点などをシステム共有することで、リピート品や類似品製作時の参考にもなります。また、ネットワークカメラなどを利用し、熟練技術者の作業を動画で残しておくことで、いつでも共有でき、マニュアル化することも可能となります。

MES市場

2021年の製造実行システムの世界市場規模は1兆8千億規模でした。グローバルインフォメーションが取り扱うStratistics Market Research Consultingの市場レポート「製造実行システム(MES):世界市場の将来展望2018〜2027)」によると、MESの市場規模は18年の98億1000万ドル(約1兆円)から27年には381億8000万ドル(約4兆1322億円)で、年平均成長率16.3%で成長すると予想している。

この市場を牽引しているのは、組織の効率と業績を向上させる方法を見出すという企業のニーズです。MESの主な購入先は、ビジネス、金融サービス、消費財、テクノロジー産業などです。MESの最も一般的な用途は、データベース管理、サプライチェーン管理、文書管理およびアーカイブです。

まとめ

Manufacturing

製造業において、工場の生産性の向上や、需要に対する迅速な対応、技術の標準化などは大きな課題としてあるのではないでしょうか。

MESを導入することで、工場全体をリアルタイムで管理でき、属人的な管理体制や、熟練者の経験値による現場対応から脱却することが出来ます。

世界的にもMESによる工場管理は注目されており、製造業のDX推進において、必要不可欠なものになってきています。