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トヨタ生産方式とは? 意味からコンセプトについて解説

執筆者:レクサー・リサーチ マーケティング 山上玲奈(やまがみ れいな)

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生産性向上を実現させる3つのステップとは

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トヨタの工場内での生産方式が、非常に優れていることを一度は聞いたことがあるでしょう。ただ、一般的な従来型の工場と比較して具体的に何が異なるのかを理解している人は多くないかもしれません。

本記事では、トヨタ生産方式の要素と、根底にあるコンセプトをご紹介します。

トヨタ生産方式とは

トヨタ生産方式(Toyota Production System = TPS)は、1939年にトヨタ自動車株式会社が制定した生産方式です。

産業革命以来の伝統的な生産方式は、企業が製品を倉庫に保管し、卸売業者を経由して小売業者に販売するという基本的なものでした。しかし、原材料の供給は、市場全体で必要な時には潤沢にありますが、需要が減りつつある場合は供給も減ってしまいます。また、在庫管理には法外なコストがかかり、企業は常に在庫不足に悩まされていました。この問題を解決するために生まれたのが、 「瞬時に製品を製造し、同時に問屋に納品する」というTPS(トヨタ生産方式) です。また、そこで品質を妥協して、潜在的な顧客を遠ざけるのではなく、製品の需要に応えることができるようになりました。

このような生産方式はMIT(マサチューセッツ工科大学)のジェームズ・P・ウォマック氏とダニエル・T・ジョーンズ氏らが共同で研究し、「リーン生産方式」と呼ばれるようになりました。

トヨタ生産方式は、経営理念やスタッフの継続的な教育など、他の企業にも取り入れられています。また、マクドナルドやアップルは、効率と品質を追求するため、人的ミスを最小限に抑え、高度に自動化された生産ラインによって、トヨタの生産方式を取り入れ、利益を得ています。

トヨタ生産方式の歴史

トヨタの生産方式がなぜ成功したかを理解するためには、トヨタがどのように形成されたかを見ることが重要です。

1910年、日本で初めてトヨペット社の馬車が2台生産されました。「トヨタ」という社名は「目を覚ます」という意味で、当初は非常に厳しい条件下で軍用車の生産に力を注いでいました。

 

その後、軍用戦車の製造を依頼され、再び戦争に関わることになります。この時期、日本は自給自足から輸出型経済への転換を迫られており、トヨタの将来にとって重要な時期でした。この時期、日本は自給自足から輸出型経済への転換を迫られており、また、軍民ともに自動車が初めて使用されたのも偶然ではありません。このような背景の中で、1937年にトヨタ自動車株式会社が設立され、1941年に最初の自動車が生産されました。トヨタの生産ラインは、このような時代の流れの中で、最先端かつ効率的なものでありましたが、現代の水準からすれば、まだまだ遅いものでした。

 

当初は、重工業や発電機、航空機のエンジンなどの製品に力を入れていましたが、このやり方ではうまくいかないことが分かってきました。そこで生まれたのが、「トヨタ生産方式」です。このシステムは、大量生産が抱える問題を解決するために考案されたもので、生産を効率化し、材料や労働力の無駄を省く、いわゆる「JIT(ジャストインタイム)計画」です。

「ジャストインタイム(JIT)とは、1936年に大野耐一が提唱したトヨタ生産方式(TPS)の自動車生産の考え方です。1936年に大野耐一が提唱したもので、顧客から注文を受けてから10分以内に、すべての部品やコンポーネントが製造現場に到着し、使用できる状態になれば、生産が最適化されるという理論です。

 

JITは、戦後、トヨタの自動車が爆発的な人気を博した時に、その重要性が認識されるようになりました。

トヨタ生産方式(TPS)に重要な二つの要素

トヨタ生産方式とは? 意味からコンセプトについて解説

トヨタ生産方式(TPS)の重要な要素は大きく2つあります。

ジャストインタイム

第一の要素は上述でも出てきた、「ジャストインタイム(Just In Time、JIT)」です。

 ジャストインタイム(Just In Time、JIT)は、生産現場の各工程において「必要なものを、必要なときに、必要な分だけ」供給する仕組みです。 それまでの製造業では大量生産方式が主流で在庫を抱えることが当たり前でした。しかし、在庫保有は市場環境の変化に柔軟に対応できず、死蔵品を抱えるリスクをはらんでいました。そのため、仕掛け品や在庫のリスクを極限まで削減する「無在庫経営」を目指し、JITは開発されました。

 

在庫を抱えていないため、注文が入ってから可能な限り生産リードタイムを短く、スピーディに生産し、供給する生産体制が必須でした。そのため、生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的に排したシステムを構築する必要性がありました。

より具体的に見ると、まずトヨタ自動車では生産ラインがすべての部品を必要性提言だけ揃えている状態を準備しておきます。クルマの注文を受けるとすぐに生産ラインの最終工程部門へ生産指示が出されます。生産ラインはどのような注文が来てもクルマを造れるよう全種類の部品を少量ずつ取り揃えているため、スピーディーにクルマの生産を行います。使用した部品は使用した分だけ、その部品を造る工程(すなわち「前工程」)へ引き取りに行きます。前工程でも同様に全ての種類の部品を少量ずつ取り揃えておき、後工程に引取られた分だけ生産し、さらに前工程から使用した部品だけ引き取りに行きます。前工程から順番に生産するのではなく、後工程で使用したものだけ引き取られて、それを補充するのが、ジャストインタイム方式の基本的な考え方です。

自働化

2つ目の重要な要素は、 ラインが異常時に直ちに自動停止することで不良品を作らない「(ニンベンの付いた)自働化」です。 

これの実現には、まず人がこだわり抜いて手作業でラインを作りこむことが必要です。安全な仕事が確実にできるまで、改善の積み上げで作業を簡単にしていきます。

最終的には、手作業での改善を全て機械に織り込んで量産ラインを改善していきます。結果として、誰がやっても同じ作業になり、職人に依存しないラインを作り出しました。

これを繰り返すことで、機械は簡単な仕組みでかつ安くなり、またメンテナンスにかかる費用や時間も低減、さらには生産量の増減に対応できる「シンプル・スリム・フレキシブルなライン」が可能となるのです。

トヨタ生産方式の広まり

トヨタの生産方式は、今日まで有効なプロセスであり続け、歴史上最も革新的な製造方法の1つと言われています。この生産方式は、ゼネラルモーターズやホンダなどの企業にも真似され、欠陥の少ない優れた自動車を生産するだけでなく、優れた顧客サービスも提供するようになりました。このように、トヨタ生産方式は今でも多くの企業にとってインスピレーションの源となっています。

根底にあるコンセプト

トヨタ生産方式には、単なる製造過程の効率化のみではなく、 生産活動は人間に基づくものであるため、何よりも人が重要、というコンセプト があります。

トヨタ生産方式(TPS)はしばしば“欠陥の最小化、詳細な計画、標準化された製品の設計、コンプライアンスの徹底によって大量生産を完成させるためのシステム”と解釈されます。しかし、これは作業工程を徹底的に簡易なものとし、機械的な解決策を導入するのではなく、穏やかなアプローチで矛盾に起因するボトルネックを取り除くことにより、無駄を排除し、継続的改善を促進することを目的とする経営哲学や思考法としてのトヨタ生産方式(TPS)に触れていません。一連の技術というよりも、あらゆる方法、材料、哲学を駆使して、人、情報、道具の3つのレバーに焦点を当てた戦略を実行するための哲学であるという見解が抜けてしまっているのです。

 

まとめ

リーダー

トヨタ生産方式(TPS)は、大きく“Just in Time”と、“自働化”の二つが重要な要素となります。前工程から順番に生産していくのではなく、後工程で生産した後に前工程に補充しに行く、という作業プロセスに対して、徹底した作業効率の改善を人の技術を軸に、機械に置き換えていく事で、品質の標準化を図り、技術の属人化を防ぎます。

これには、単に作業効率化を求めるのではなく、全従業員の協力・信頼が不可欠になります。

人・情報・道具のどれもないがしろにすることなく、より良い方法を継続的に探し続けていく事で、生まれた生産方式である、と言えるのではないでしょうか。