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フロントローディングとは?フロントローディングはなぜ必要?基礎から解説
あなたが製品を作り、市場に出そうとしているところを想像してみてください。アイデアはあるのですが、作る前に多くの作業が必要です。問題は、最初からきちんと仕事をしようと思うと、リソースが限られていて、しかも高価なことです。このようなリソースをどのように管理していけばいいのでしょうか?
この記事では、製造業におけるフロントローディングの意味と、なぜフロントローディングが必要なのかについて説明します。また、さまざまな企業がこのテクニックを使って、新製品を市場に投下するスピードを高めた例をいくつか紹介します。
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フロントローディングとは?
フロントローディングとは、量産立ち上げ前の生産準備段階において、現場で起こりうるトラブル・ロスを検証し、対応し、結果的に製品やプロジェクトの初期段階で多くのリソースを費やす事を指します。フロントローディングを行うことで、生産性を持続的に向上させ、結果をよりよくコントロールする事ができるといわれています。
フロントローディングの重要性
製品を製造するときは、フロントロードすることが重要です。これには2つの理由があります。1つは、生産と保管の費用を節約することでコストを削減することです。第二に、生産の後期段階での不良率を減らすことにより、製品の品質を向上させます。
「フロントローディング」という用語は、前倒しできる初期段階で作業プロセスを実行する戦略を指します。しかし、日本ではこれまでこの方法が採用されていませんでした。これは、欠陥が発生した段階で必ず欠陥を修正するという従来の考え方であり、故障や不具合の防止を目的としたFMEAやFTAといった分析を中心に検証を行うというのが一般的でした。
フロントローディング方式は、生産段階の効率も向上できることを意味します。人件費は生産コストの主要な要因です。製品が最も効率的な段階で生産され、品質が維持されると、生産コストが削減されます。
フロントローディングが効いていると、作業負荷が前倒しにシフトすることになる
フロントローディングを効果的に進める方法
ここまで、フロントローディングの意味を説明しましたが、単に作業負荷を前倒しするだけでは、設計者の工数が増大し、余計な仕事を増やしてしまうことになりかねません。
ここからはフロントローディングを効果的に進めるための3つの視点をご紹介いたします。
最適な人員をアサインする
リソースをフロントローディングする方法の1つは、初期のプロトタイプに取り組むのに最適な経験者を採用することです。過去には、これは必ずしも適切なスキルセットを持たないチームを構築することを意味したかもしれません。
しかし、最近では、製品に使用できる新しい技術の知識を持つ人がたくさんいますし、異なる文化的な視点をもたらすことができる人はさらに多くいます。経験値の高低に関わらず、これらの人材は優れた製品とビジネスを構築するための貴重なスキルを持っているのです。彼らは、しばしば「アーリーアダプター」と呼ばれます。
企画・設計段階におけるコストを惜しまない
フロントローディングのもう一つの戦略は、構想中の製品に相当な金額を費やすことです。これは少し、満たされないものにお金を投じるように見えるかもしれませんが、多くの場合、製品そのものではなく、「これは私たちにとって重要だ」ということを表明するためのものなのです。最小限のコストでアイデアがうまくいくことを確認するために、初期のプロトタイプに500万円を費やすというような単純なことでもよいのです。
十分な検討を行うことが重要
新製品の生産や新ラインの立ち上げをする上での目標はいつも同じで、製品づくりのために貴重な資源を適切なタイミングと場所に投入することです。こうすることで、問題を解決できないアイデアにすべての資金を浪費することがないようにし、次のような重要な質問をするように仕向けることができるのです。
組織おいて重要となる2つの問い
「この新製品は競合製品よりも優れているのか」
「顧客はこれを買ってくれるのか」
フロントローディングの事例
ここで、異なる戦略でビジネスアイデアをフロントローディングした企業を見てみましょう。
テスラモーターズ
CEOのイーロン・マスクがエキセントリックな億万長者と評されるテスラモーターズです。2006年、彼は当時電気自動車にほとんど関心のなかった消費者のために、手頃な価格の電気自動車を生産することを目標にテスラを設立しました。
多くの人は、マスク氏をスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツと比較し、この2人は顧客が何を求めているかを把握することに長けているが、少し攻撃的な面もあるため物議を醸していると述べています。このような人物を「先見の明がある」と言うのです。
テスラモーターズは、数年間、電気自動車で利益を上げることができず、深刻な事態に陥っていた。しかし、その後、同社は重要な決断を下します。それは、フロントローディングを行うことでした。2008年夏、イーロン・マスクは、従来のガソリンエンジンの代わりにリチウムイオン電池を搭載した全電気駆動の10万ドルスポーツカー、ロードスターを世に送り出したのである。
予算は予想よりはるかに少なかったが、うまくいった事例といえます。
Apple
フロントローディングを行う目的は、自動車メーカーと電気機器メーカーで異なります。
・自動車メーカーの場合においては部品コスト、製造コストが高く試作品にも多くのコストがかかってしまうため、コスト削減を目的としフロントローディングによりコストの最適化を行う事が重要です。
・電気機器メーカーについてはユーザーのニーズ変化のスピードが速い事や、競合他社の新製品開発の競争が激化している事により早期に試作品から完成品を作らなければなりません。電気機器メーカーにおいてはフロントローディングを行う事で製造スピードを最適化する事が重要となります。
上記のように目的は違うが、どちらのフロントローディングが製品の付加価値を高めるためのポイントであるということです。
2021年のデータとして日本でのシェア56%を超えているiPhoneについては、ハード・ソフトにおいて、それぞれが技術の点で世界最高とは言えません。しかし、各部品や機能のそれぞれが業界最先端の技術のみを活用しているわけではありませんが、それぞれを機能的に複合し製品化する事で製品の魅力を生み出し、マーケットシェアを拡大する事に成功し、事業を拡大しています。
フロントローディングを活用する事で標準的なモジューラ型部品と固有の部品を融合し製造スピードを落とすことなくユニークな機能を持った新製品を出せている大きな要因の一つと言えます。
まとめ
本記事では、フロントローディングの意味から、その重要性、そして事例についてご紹介しました。フロントローディングを進める上で、抑えておきたいのが「エイヤで前倒し」すればいいわけではないという点です。先述したように、従来の業務プロセスのまま工数を前倒しするだけでは、効果的なフロントローディングは期待できません。
ここで、効果的となるのが、仮想環境での検証です。例えば、シミュレーションソフト等で企画・設計案をパソコン上に構築してみて、設計案の問題がないか、この案でうまくいくのか等を検証する。そして、検証結果を元に社内での議論を深める。このサイクルを繰り返すことで、より効果のあるフロントローディングが進められるといえます。
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著者情報
山上 玲奈(株式会社レクサー・リサーチ マーケティング担当)