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TOCとは:生産管理にはどう使う?基礎から解説

執筆者:レクサー・リサーチ マーケティング 山上玲奈(やまがみ れいな)

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TOCとは:生産管理にはどう使う?基礎から解説

生産プロセスにおいては生産ラインが円滑に進むことが最も重要であり、生産活動が滞りなく行われるために生産管理があります。本記事では生産管理における「TOC理論」についてご紹介します。

TOCとは

制約条件の理論(TOC)とは、1984年にエリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)が提唱した説であり、あらゆるシステム、企業は生産性を最大限に高めるためにどこに努力を注ぐべきかを特定するための経営理論のことです。ゴールドラット博士は、この理論に基づいた小説「ザ・ゴール:企業の究極の目的とは何か」を書き、1984年の出版以来、25カ国語以上に翻訳され、400万部以上売れています。

この本の中でゴールドラットは、架空の会社を使って、TOCが現実の問題にどのように適用できるかを説明しています。この会社の生産ラインは、意思決定に関わる人が過剰であり、ラインそのものに携わる人が少ないため、ラインの稼働率は低下しています。その 解決策は、制約条件(ボトルネック)を特定し、すべての意思決定と努力をその制約条件の改善に集中させること です。

TOC理論における考え方は、すべてのシステムには、製品やサービスを生産する能力を制限する1つ以上の制約があるというものです。この制約とは、機械や人員などの物理的なリソースであったり、時間的な要因であったりします。

TOC理論の2つの原則

TOCの方法論は、2つの基本原則に基づいています。第1の原則は、すべてのシステムには生産能力の限界があるということです。第2の原則は、システムのある部分を改善すると、他の部分にも同等以上の改善効果がみられるということです。

DBR法との関連

TOC理論に基づいて実際に改善を行う際に、代表的な手法としては「DBR法」というものがあげられます。

DBR方式は3つの原則に基づいています。

1.     バッファーゾーンの原則 2. ロープの原理 3. ドラムの原理 です。

バッファゾーンの原理とは、各生産ステーションに一定量の在庫を確保し、部品や製品の欠品や過剰在庫がないようにすることです。これにより、部品や材料の待ち時間が短縮され、生産効率の向上と生産量当たりのコスト低減につながります。

ロープの原理とは、一人がロープを引っ張り、支援を必要としている人に合図を送ることで、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、発生していたボトルネックを解消することができます。

ドラムの原理とは、一人がドラムを鳴らすと、他のメンバーが作業を開始するよう促すものです。これにより、チームの各メンバーがやるべきことを確実に実行し、一人も怠けることなく仕事をすることができます。

TOCとトヨタ生産方式の違い

TOC理論とトヨタ生産方式は「ムダを排除する」ポイントは同じであるものの、焦点にあてているものが異なります。

TOC理論は工程や作業単位を見ているのに対して、トヨタ生産方式では人が主体の自働化(異常を判断して設備を止めるなど)に着目していることがわかります。

なぜTOC理論が重要なのか?

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TOC理論は、システムにおける制約条件を特定し、優先順位をつけることで、経営者がビジネスを改善する方法についてより良い意思決定をするのに役立ちます。これは、 複雑で絶えず変化する環境において成功するための鍵 です。

TOC理論導入のメリット

TOC理論により、管理者はパフォーマンスを制限している制約を特定し、それに対処することができるようになります。

TOC理論の導入により、組織が得られるメリットは以下の通りです。

– 効率の向上

– 品質の向上

– コスト削減

TOC理論を製造業に適用する方法

TOC理論を実施するためには、まず制約条件を特定する必要があります。ここでの制約は、スループットを制限するようなものや、生産を遅らせるような資源であればその種別は問われません。制約を特定したら、それを分析し、改善策を考慮します。ここでは、余計な資源や時間を増やさずに、より多くの仕事を処理できるようにしなければいけないという視点が求められます。

TOC理論の4つのステップ

TOCのプロセスは4つのステップで構成されています。

1) 制約の特定

仕事の流れを最も悪くしている箇所を探すことから始めます。

制約の影響を受けていない部分のパフォーマンスを高めても、プロジェクト全体のパフォーマンスを高めることはできないからです。

つまり、各プロセスの中でパフォーマンスが決定的になるステップをピンポイントで探す必要があります。

2)制約条件を利用する

パフォーマンスを決定するポイントを特定した上で、生産性を高めるためには、そのポイントを解消する必要があります。

例えば、特定業務を担当できるスタッフが少ないことだとします。組織のリソースには限界があるため、短期的な解決策としては能力に長けた外部人材を活用するといった方法が考えられます。

3)実際に反映させる

選択した戦略を実行し、生産性低下につながる要因を排除します。

ステップ2の例では、能力の低い人や実務経験の浅い人は、その人の能力不足が影響するためその人が担当できる業務に割り当てます。

そして、能力が高く、職務経験が豊富な人材には、その人にしかできない仕事を割り当てます。

4)制約を高める

ステップ2では短期的な解決として外部人材を活用しましたが、長期的な解決には制約となっていたスタッフの能力を向上させることが求められます。例えば、スタッフに研修や指導を行うことで能力向上を図るといった方法が考えられます。

このような流れで制約を解消させるわけですが、制約を解消すると新しい問題点が見つかります。そのため、新たに見つかった問題点やそのほかの問題点を解決するため、新たな制約を見つけるステップ1~4の手順を繰り返すことになります。

まとめ

TOCとは:生産管理にはどう使う?基礎から解説

本記事ではTOC理論に関する意味からその原則、具体的な流れについてご紹介しました。

 TOC理論の基本的な考え方は、「生産活動は連続的なプロセスである」ということ です。製造のボトルネックは常に存在するため、経営者は「継続的な効率化の姿勢」を持つことが重要なのです。

元記事発行日: 2022年9月27日、最終更新日: 2022年9月27日