MES(製造実行システム)とは?
意味から導入の効果、ポイントについて解説

Manufacturing Execution System

本記事では、MES(製造実行システム)の意味やその機能、導入によって期待できる効果について解説します。

MES(製造実行システム)とは?

製造実行システム(MES)とは、商品を生産するための製造装置、プロセス、ビジネスシステムを管理、制御、調整するコンピュータ化されたシステムです。

MESは、 Manufacturing Execution Systemの略

MESは、ハードウェア、ソフトウェア、その他のリソースを統合したソリューションであり、メーカーが効率的に注文を実行できるよう支援します。また、企業がMESに投資することは、時間の経過とともに時間と費用の両方を節約できるため、非常に理にかなっています。在庫の紛失や納期の遅れなど、MESを導入することで企業は軌道に乗り、生き残ることよりも利益を上げることに集中できるようになります。

MES(製造実行システム)とは?意味から導入の効果、ポイントについて解説

MES と ERP の関係

MESは、しばしばERP(Enterprise Resource Planning)システムのカテゴリーで語られます。ERPソフトウェアシステムは、企業内の財務、ビジネス、および人的資源を統合するもので、MESシステムも同じですが、MESは主に製造業の中で活用されます。

MESの導入実態

MESは、世界最先端のディーゼルエンジンメーカーであるボッシュや、航空宇宙、防衛、石油・ガス、医療などの産業向けのモーションコントロール技術や統合システムのトップメーカーであるパーカー・ハネフィンなどの企業で採用されています。

また、株式会社グローバルインフォメーションの2021年の調査によると、MESの市場規模、2026年に全世界で171億米ドル到達すると予測されています。

一方で、日本企業の導入は未だ少なく、組立製造業の中小企業の7割(年間売上高5億円未満)が導入していないという調査結果もあります。

ERP

MES 導入で期待できること

時間と費用の両方を節約することができる

MESは先述したように、ハードウェア、ソフトウェア、その他のリソースを統合したソリューションであり、オーダーを効率的に実行するプロセスを支援するものなのです。

企業がMESに投資することは、業務の効率化を実現し、今まで価値を生まない間接業務にかかっていた時間を節約し、それにかかる工数を削減することができるため、時間と費用の両方を節約することができます。

製造に関わるリソースを管理することができる

MESでは、利用可能なすべてのリソースを管理し、生産と生産ラインを協調してマネジメントすることができます。

また、MES活用によって、在庫の紛失や納期の遅れを防ぎ、事業が軌道に乗り、単に生き残るのではなく、利益を上げることに集中できるようになるのです。

 

従来は担当者レベルで管理できていた生産ラインも、いまや多品種少量生産やロット生産の広まりによって、その管理は複雑かつ難しくなっています。お客様のフォローができなかった、商品の所在がわからず納期に間に合わなかった といった事態を防ぐためにも、MESの導入は効果があるといえます。

マネジメント

少ない人員で、多くの生産が可能になる

MESを利用して生産を調整し、促進することで、企業はより少ない人員と物理的な在庫への投資でより多くの生産を行うことができます。コンピュータはもともと事務や会計のために使われることが多かったものですが、今では生産工程でも多用されるようになっています。

MES の一連の流れ

MESは、製造プロセスの様々なステップで、いくつかのユニットに分割されます。通常、MESのエントリポイントは、オーダー情報をシステムに入力することからはじまります。

MESを製造プロセスとして使用することには多くの利点があります。このシステムにより、生産に関連するタスクの管理と調整が改善され、注文のリードタイムが短縮され、在庫管理コストが削減され、プロセスの効率が向上することで顧客満足度が向上し、自動化が進むことで廃棄物が削減されます。さらに、自動化されたシステムは人為的エラーに関連する問題に対して脆弱ではありません。システムを使用し、自動化が進むことにより適応性が高まることから、技術が進歩し、より効率的な生産プロセスが可能になります。

ステップ1:オーダー情報を受け取る

MESの最初のステップは、顧客が企業に注文をし、オーダー情報を受け取ることからはじまります。顧客から要求された情報から注文書が作成されます。注文書には、数量、価格、納期、配送方法に関するデータが含まれることがあります。これらの情報は、処理するためにMESに送られ、MESは注文の処理を行います。

ステップ2:オーダー情報から、生産と資材に関する判断を行う

MESの次のステップでは、システムに入力されたオーダー情報をもとに、生産と資材の配送について必要な判断を行います。その注文を直接受けるのか、それとも卸売業者や小売業者を経由してから最終的な製造段階ですぐ受けるのかを決める必要があります。

 

これは、企業がビジネスを継続するために、様々な顧客にシステムを適合させることを可能にするものであり、MESシステムの本質的な側面です。また、これによって企業は、異なる価格帯で販売できる特定の商品を生産し、市場の特定のセグメントで使用することができるようになります。

 

またこの際、同時に何件の注文を受けることができるか、企業が優先的に処理すべき注文は何か、他の人が処理できる注文は何かを判断することも重要なポイントです。

ステップ3:生産活動における各リソースを管理しながら、製造を進める

オーダーに関する判断が終わった後は、さまざまな生産リソースの数を通して製造する必要があります。このステップのための主要なリソースは、生産を行うための機械・装置からはじまり、作業者や治具、部材など多岐にわたります。

これらのリソースを適切に管理しながら、製造を進め、注文段階で求められていた数量を期日通りに顧客に納入することが求められます。

MES(製造実行システム)とは?意味から導入の効果、ポイントについて解説

MES 導入におけるポイント

MESと関連する機器を接続する

MESが効果的に機能するためには、人々が容易に適応でき、可能な限り効率的に仕事ができるようにするための適切なツールをすべて備えている必要があります。従業員は、システムを効果的に使用できるようにするために、必要なすべての機器にアクセスできる必要があります。

ビジネススタイルに合ったシステムを選ぶ

製造業には様々な製品や、受注生産、受注生産、個別生産など様々な製造スタイルがあます。それによって製造工程も大きくことなります。

そのため製造実行システムに必要な機能は製造スタイルによって大きく異なるため、実装する製造実行システムも、それぞれの製造スタイルに合わせ選択する事が重要になります。

 

選択するべきシステムがわからない場合は、下記を参考にしてみてください。

①    システムを導入する事で達成したいゴールを明確にする。

②    ゴールを達成するために必要な機能を洗い出す。

③    洗い出した機能をカバーしているシステムをリストアップする。

④    リストアップしたシステム群から達成するべきゴールを想定し費用対効果を検討する。

⑤    費用対効果の合うシステムから自社に導入した事を想定し、適切に使いこなせるシステムかを確認する。

 

また、システムを導入するだけで問題の解決となることは少なく、システムをどのように扱うのか、組織化する必要があるのか等を検討することが重要になります。

 

会社によっては、製品ごとに製造方法が異なる場合があります。複数の製造方法に対応しているかも事前に確認する必要があります。

MES 導入におけるポイント

企業で使用される製造ソフトウェアが増え続ける中、これらのシステムをより標準的かつ効率的に管理する方法が必要とされています。製造実行システム(MES)は、このような目的を念頭に置いて設計されており、リアルタイムのデータ監視やオペレーションに関わる複数の関係者間のコミュニケーションの改善などの機能によって実現されています。

MES(製造実行システム)とは?意味から導入の効果、ポイントについて解説
著者情報

山上 玲奈(株式会社レクサー・リサーチ マーケティング担当)