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PSI計画とは?意味から具体的な作成方法まで解説

執筆者:レクサー・リサーチ マーケティング 山上玲奈(やまがみ れいな)

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PSIとは?意味から具体的な作成方法まで解説

近年では需要変動が大きくなり、ニーズの把握や予測を行うことがますます重要視されています。そこで、本記事では生産・販売・在庫を統合する PSI計画について意味から具体的な管理方法までご紹介いたします。

PSI計画とは

 PSI計画とは、生産計画、販売計画、在庫計画を統合し、同時に実践することで、過剰在庫や欠品を防ぎ、適正在庫を維持し、業務効率を向上させようとするもの です。

 

PSIはそれぞれ生産(production)、販売(sales)、在庫(inventory)の3つの英語の頭文字をとっています。PSI計画のことを日本語で “生産-販売-供給計画 “とよぶこともあります。

PSI管理の目的とポイント

PSI計画を実践するための有効な経営戦略が「PSI管理」とよばれるものです。

適切な生産計画や在庫の最適化を実現するために、多くの企業が生産・販売・在庫を統合したPSI管理を実践しています。

PSI管理を行う際に留意すべきことは、 人間の勘に頼るのではなく、客観的な数字に基づいて仕入れ量と生産量を決定すること です。そのためには、計画と実績の比較・分析が欠かせない第一歩となります。

計画と実績を比較してプロセスや結果を見直し、問題点を修正することで、PSI計画の精度を高め、PSI管理をより効果的なものにすることができます。

PSI管理の基本

PSIとは?意味から具体的な作成方法まで解説

ここでは例として、以下のような実績値と計画との差異を考えてみます。

  • 売上目標(販売する個数):1000

  • 生産計画(生産予定数量):1100

  • 計画在庫(製品の在庫数): 500

  • 実際の販売個数:700

*1000個販売する予定が、700個しか売れなかったと仮定します。

 

生産数1100個、在庫数500個のうち、700個しか売れなかったので、(生産数+在庫数-販売個数)在庫数は900個になります。

翌月も同じ量を生産すると、在庫に余剰が生じてしまう為、この問題を解決するために生産量を減らします。

このようにPSI管理は、適切な需要予測に基づいて構築するのが一般的です。

PSI管理の流れ

PSI管理は、以下の4つのステップで行います。

Step1. 需要予測による正確な販売計画

生産と在庫を適正な水準にするために、需要を予測します。需要予測は、基本的に過去のデータから経験則を見いだす方法で行います。

例えば、1年のうちで売上が伸びる時期と下がる時期があるなど、売上が変動する原因を探っていきます。その原因は、”市場のニーズ”、”競合他社”、”技術動向 “など、さまざまな変数が考えられます。

Step2. PSI計画表を作成する

需要を推定した上で、PSI計画表を作成します。横列は月ごとの日付、縦列は「販売計画」「生産計画」「在庫計画」「在庫回転計画」(期首から期末までの12ヶ月間)です。販売戦略に基づいて、毎月何台製造するかという生産計画を分析します。

 

“月販計画在庫の半分 “は、在庫品の数量を確定する在庫計画によって、期首の生産計画に追加されます。

 

期首在庫計画:(期首生産計画+月販計画の50%)-期首販売計画

この計算を適用すると、販売目標が1000個の場合、次のような数字になります。

 

  • 販売計画:1000個
  • 生産計画:1100個(販売計画より10%増)
  • 在庫計画: 500個

最後に、在庫がどの程度の期間で変化するかを決めるために、在庫回転率の戦略を立てます。在庫回転に使用する日数は、以下の計算式で算出されます。

 

在庫回転日数は、在庫数÷翌月の予想売上高×30日で計算されます。

前述の数字をあてはめますと、在庫回転日数は以下のように計算されます。500(在庫)÷1000(予想販売数)×30日=15日(在庫回転日数)

このように算出された数値を元に期末までの数値を完成させます。

PSIとは?意味から具体的な作成方法まで解説

Step2. PSI計画表に見込みの数量を取り入れる

  • 次にPSI計画表に見込み客の数量を組み入れます。縦列に、戦略の対象となる見込み客の数を表す行を新たに追加します。

各計画に入力した金額に基づいて、見込み客数の数字を追加します。たとえば、各数量が予想数より 10%多い場合、縦の列は次のようになります。

■ 販売目標台数が500台の場合

  • 販売計画:500個
  • 販売見込み数 :550個
  • 生産計画: 550個
  • 生産見込み: 605個
  • 在庫計画 :300個
  • 在庫数:310個
  • 在庫回転日数:18日
  • 在庫回転日数予測 17日

(在庫と回転の統計値のみ、その値の変化を予測して調整しています)

 

精度を上げるために、実際の販売データや予測に合わせて、見積もり数値を変更することも可能です。

Step4.PSI計画表に実績値を記入する。

PSI計画表には、各部門の実際の数字を記入します。

実際には予想通りの出来事が起こらず、実績値が上下に動く月もあります。

このような変化に柔軟に生産量を対応させることで、「欠品・過剰在庫」を回避することができます。

PSI管理における課題

PSIとは?意味から具体的な作成方法まで解説

 PSIにおけるポイントは「実績値に応じて需給を変化させ、効果的な販売計画を立てること」です。 

PSI計画では需要予測 、販売計画は非常に難しく、ここを誤ると予測が大きく狂ってしまうという課題があります。データの入力にはExcelを使うこともありますが、大量のデータを扱い、客観的に分析することは困難です。最近は効果的な販売計画を立てるためのツールがありますから、そういったツールを使うこともひとつでしょう。

PSI管理の成功に向けて

PSI管理の導入と分析により、生産計画、販売計画、在庫計画を統合した最適な計画を立てることができます。

PSI計画には生産にまつわる各情報が求められるので、ERPといった基幹システムからデータを収集するという手もあります。

まとめ

顧客ニーズの多様化により、1つの工場で同じものを作り続けるという生産モデルは時代遅れになっています。そうした状況下においては、PSI計画のような需要予測に基づく戦略的な生産・在庫計画がますます重要になっていきます。

元記事発行日: 2022年9月12日、最終更新日: 2022年9月12日