モノづくり用語解説| 本記事は 9分で読むことができます

リードタイムとは?短縮方法と成功事例を紹介!

執筆者:レクサー・リサーチ マーケティング
園田 舞(そのだ まい)

リードタイムとは?短縮方法と成功事例を紹介!

リードタイムとは?

リードタイムとは、ある工程に着手してから、その工程が完了するまでの所要期間のことを指します。また、実用日本語表現辞典では「着手から完了までに要する時間(期間)、商品を顧客の手元へ届けるまでにかかる総時間」と定義しています。一般的には、商品の発注から納品までにかかる時間として使われますが、製造業や物流業の他に、サービス業や小売業などでも使われることがあります。よってリードタイムの範囲(どこからどこまで)は業種や生産する製品によって異なってきます。

リードタイムの重要性

リードタイムは製造業のみならずあらゆる業種の企業にとって非常に重要な指標です。リードタイムが長い事でもたらされる主なデメリットとしては、顧客満足度低下、販売機会の損失、在庫管理コストの増加、キャッシュフローの悪化などがあります。このようにリードタイムは企業の経営全体に影響を与えるような様々な側面に直結しているため、リードタイム短縮を常に意識し、最適なリードタイムを実現するために管理、改善する必要があります。

リードタイムを短縮する方法

ここではリードタイムを短縮する方法を3つご紹介します。

生産プロセスの改善

一つ目の方法として生産プロセスの改善が挙げられます。以下に具体的なアプローチを紹介します。

生産工程の平準化

作業手順や工程を標準化することで、生産のばらつきを減少させ、効率的に生産ができます。標準化されたプロセスは、従業員が一貫して高品質の製品を迅速に製造することが可能になります。

ムダの排除

生産プロセスにおけるムダとは具体的に以下のようなものが挙げられます。

・待ち時間: 部品や材料が届くのを待っている時間

・移動時間: 作業場所間の移動時間

・不良品の発生による時間: 作り直しが必要な製品が発生する時間

・在庫: 使用されるまで待機している製品や材料

・運搬: 製品や材料の運搬に要する時間

・加工: 製品や材料の加工に要する時間

これらのムダを徹底的に排除することで、生産時間を短縮することができます。

ボトルネックの特定と解消

生産ラインのボトルネックを特定し、それを解消することで全体のスループットが向上します。例えば、特定の機械が生産速度を遅らせている場合、その機械の性能を向上させるか、追加の機械を導入することが考えられます。

ワンタッチ化

ワンタッチ化とは、作業を一回の動作で完結させることを指します。例えば、作業に使用するツールや治具をワンタッチで交換可能なものにする、複数の作業を一つのステーションで行えるように統合して移動時間をなくす、複数の部品を組み付ける作業をワンタッチで取り付けられるように改善するなどが考えられます。

自動化

ロボットやAGVなどの自動化機器を導入することで人手による作業を減らし、作業精度の向上やスピードアップすることができます。

見える化

生産状況をグラフや表などでわかりやすく表示するなど、現場の状況や作業の進捗を視覚的に把握しやすくすることで、問題点の早期発見や迅速な対応を可能にします。

これらの方法を組み合わせて実施することで、生産プロセス全体的の改善を行い、リードタイム短縮を実現します。

在庫管理の改善

二つ目の方法として在庫管理の改善が挙げられます。以下に具体的なアプローチを紹介します。

適正在庫の設定

必要な在庫量を適正化することで、過剰在庫や在庫不足を防ぎます。過剰在庫は在庫管理コストやスペースコストがかさむだけでなく、陳腐化や破損のリスクも高くなります。また、在庫不足は生産の遅延や品切れを起こす可能性があります。在庫量の適正化を図るためには、需要予測を正確に行うことが重要です。需要予測には、過去の販売データや市場動向などを分析する必要があります。

ロットサイズの最適化

生産や調達において一度に製造または購入する量(ロット)を最適なサイズに調整します。市場の需要や生産能力の変動に応じて定期的にロットサイズを見直し、在庫の回転率を高めて効率的に管理します。

在庫管理システムの導入

在庫管理システムを導入することで、在庫状況をリアルタイムで把握し、必要な材料や部品の不足を早期に検知し迅速に対応できます。また発注業務を自動化することも可能です。

サプライヤーとの連携強化

サプライヤーとの連携を強化することで、在庫情報を共有したり、必要な時に必要な量だけ部品や材料を納品してもらうことが可能になるため在庫量を適正に保つことができます。

顧客とのコミュニケーションの改善

三つ目の方法として、顧客とのコミュニケーションを改善することでリードタイムを短縮する方法をいくつかご紹介します。

顧客に情報を共有する

顧客と注文状況や納期などの情報を共有することで、顧客は自身の注文についてどのような状況かを把握する事が出来ます。これにより情報の透明性が上がるため、顧客の不安を解消できるだけでなく、誤解やミスを防いだり、調整などの対応も早急に行う事が出来ます。方法としては顧客専用ポータルサイトを提供して情報にアクセスしやすくする、プロジェクト管理ツールやCRMシステムを活用するなどが挙げられます。

顧客からのフィードバック収集

顧客からのフィードバックを定期的に収集して、生産プロセス等に反映する事でリードタイムを短縮することができます。方法としては、定期的なアンケート調査、インタビューや顧客満足度調査などです。顧客からのフィードバックは、ニーズや要求を正確に把握し深く理解できるため、製品やサービスの改善に役立ちます。また企画など早期の段階から顧客と共同作業を行い、ノウハウやアイディアを活用する方法もあります。

コミュニケーションツールの活用

メール、電話以外にも、チャット、SNS などのコミュニケーションツールを活用することで、顧客とのコミュニケーションを効率化することができます。SNSで最新情報の発信や顧客からの質問に答えたり、チャットボットを導入して顧客からの問い合わせに自動で対応したりする方法です。様々なコミュニケーションツールを活用する事で顧客からの要望や問い合わせに対してより迅速に対応する事が可能となり、顧客満足度向上につながります。

リードタイムを短縮するメリット

顧客満足度向上

リードタイムが短ければ短いほど、製品やサービスを早く手に入れたいという顧客の要望に応えられます。そして製品やサービスを早く届けることで顧客満足度を向上させることができます。また、一貫して納期を守り迅速に製品やサービスを提供することで、顧客の信頼を獲得し継続的な取引やリピーターも見込めます。

販売機会の増加

顧客がすぐに商品やサービスを手に入れることができるため、販売機会が増加します。

生産性の向上

リードタイムを短縮することで、無駄な作業を減らしたり、生産工程での停滞を減らしたりできるため、生産性が向上します。また、需要変動に迅速に対応できるため生産計画の柔軟性が向上します。

コスト削減

生産性が向上することで、人件費や原材料費などのコスト削減に加え、過剰在庫を持つ必要がなくなるため在庫量を減らすことができ、在庫管理コストを削減することができます。また、効率的な配送計画が立てられるため物流コストも減少します。

競争力の強化

リードタイムが短い事は企業の競争力強化につながります。新製品を迅速に市場に投入できるため、競争優位性が向上します。また、顧客の急なニーズや市場の変動に迅速に対応できるため、競争力が高まります。

リスク管理強化

リードタイム短縮により在庫量が少なくなることで、製品の陳腐化や不良在庫のリスクが低減されます。また、需要の急な変動に対して柔軟に対応できるため、リスクを最小限に抑えることができます。

従業員満足度向上

リードタイム短縮において生産プロセスを効率化する事で、従業員の負担を軽減し、働きやすい環境を提供します。残業の減少や業務に余裕が生まれる事でワークライフバランスが向上するだけでなく、リードタイム短縮に向けた改善活動により仕事の質が向上する事でモチベーションを高めることができます。

上記のような様々なメリットがある事から、リードタイム短縮は企業にとって非常に重要な取り組みであると言えます。

リードタイムとは?短縮方法と成功事例を紹介!

リードタイムを短縮するポイントと注意点

開発リードタイム

開発リードタイムを短縮することは、製品を迅速に市場に投入し、競争力を高めるために重要です。以下に、開発リードタイムを短縮するためのポイントと注意点を説明します。

市場調査や顧客ニーズのキャッチ

例えば市場調査を行う部門との連携強化、顧客との交流、SNSを分析するなどを行い、市場変化や潜在顧客のニーズを素早くキャッチする事で開発リードタイムの短縮ができます。

部品や工程の標準化

部品やユニットの共通化を進めることにより、異なる製品ラインでも同じ部品やユニットを再度利用できるため、設計変更を減らすことができます。部品を共通化できれば、切り替え時間や在庫管理のコスト削減にも繋がります。

アジャイル開発手法の導入

アジャイル開発は、短期間で成果物をリリースし、顧客などからのフィードバックを反映しながら開発を進めていく手法です。まずは最小限の機能で開発を進めれば製品のリリースまでを素早く行うことができ、顧客からの要望や市場の変化における仕様変更への対応も可能になります。

テストやリスク管理を省略しすぎない

製品を迅速に市場に投入するメリットが大きい一方で、テストが不十分でないか、リスクの見落としがないかには注意が必要です。検証やテストを省略してしまうと、製品の品質低下や顧客満足度低下だけでなく、最悪の場合は製品のリコールにつながる事もあります。

調達リードタイム

調達リードタイムを短縮することは、サプライチェーン全体の効率化とコスト削減に直結します。以下に、調達リードタイムを短縮するためのポイントと注意点を説明します。

SCM(サプライチェーンマネジメント)の強化

SCMによりサプライチェーン全体を俯瞰し見直すことでリードタイム短縮につながります。サプライチェーン全体の情報(需要予測、在庫状況、納期状況など)を関係者間で共有し見える化する、在庫管理を最適化する、輸送手段や手配を見直して物流の最適化するなどの方法があります。

また、サプライヤーとの関係構築も重要です。定期的に会議等で情報共有を行う、戦略的なパートナーシップを結び連携を強化することで、納期遅延などのリスクを減らし、安定的な供給や問題が発生した際には協力や柔軟な対応が期待できます。

調達プロセスの効率化

発注書のフォーマットを標準化したり、発注承認フローを簡素化したりすることで、発注にかかる業務を効率化し時間を短縮します。また、調達・購買管理システムを導入することで、発注から納品までの情報を一元管理し、調達リードタイムを短縮することができます。

リスク管理の強化

サプライチェーンの各段階でリスク分析を行い、リスク管理計画を策定したり対応策を事前に準備します。例えば主要な部品や材料の供給においてサプライヤーを絞ればリードタイム短縮につながりますが、リスク分散のためには複数のサプライヤーを確保します。また、輸入品から国内品や地域で調達できる原材料や部品へのシフトを行う事も、物流の時間やコスト削減にもなります。

生産リードタイム

ここでは生産リードタイムを短縮する際の注意点について説明します。

品質の維持

リードタイム短縮を急ぐあまり、製品の品質低下が起こらないよう注意する必要があります。急激なプロセス変更によりトラブルが生じたり、検査工程を省略して不良品率が上がったりする事が挙げられます。リードタイムを短縮できた時間のみを成果として判断せずに、業務効率化や生産性向上といった目的のために行う事とし長期的に評価・改善する視点が必要になります。

従業員の負荷

リードタイム短縮を急ぐあまり、従業員に過度の負荷がかからないよう注意が必要です。無理をさせてしまうと従業員のモチベーション低下、過労や離職に繋がります。現場とコミュニケーションを十分に取る、労働時間の管理を行う、新しい工程や設備の導入があれば技術習得の教育を行うなどが必要です。

必要項目を省いていないか確認

リードタイム短縮において、実は生産に必要な工程を省いてしまったという事がないよう注意が必要です。ムダを見直す際には、なぜムダなのかについて現場の意見もよく聞いて理解する必要があります。各工程の役割と重要性を明確にし、関係者の合意を得た上で進める必要があります。

リードタイムに関する成功事例

デンマークに本社を置く中判カメラシステム大手Phase Oneの日本法人であるフェーズワンジャパンでの、多品種少量生産にてリードタイムを短縮できた事例を紹介します。
同社はカメラレンズやその他の写真機器を製造しています。彼らは長いリードタイムと高い在庫レベルという課題があり、生産性を高めるためにはリードタイム短縮と在庫削減が必要とされていました。生産革新を行えるソリューションを探した結果、生産シミュレータGD.findiを導入することを決定しました。複数部署からメンバーを集めて生産革新チームを結成し、生産現場の合意を得ながら、生産フロアのレイアウト、人や設備の割当、サプライチェーンの構成など様々なシミュレーションを行いました。シミュレーション結果から方向性を確認していき、従来のやり方から変えるべきところを明らかにしていきました。そうして業務改革を推進した結果、製造リードタイムを28日から10日に短縮し、工場在庫も30%削減する事ができました。

まとめ

製造業におけるリードタイムの短縮は、競争力やコスト、顧客満足度など様々な影響もたらす重要な課題です。生産プロセスや在庫管理、顧客やサプライヤーとの関係性など広い視点で取り組む必要があります。本記事では生産シミュレータ活用での成功事例を紹介しましたが、自社にあったリードタイム短縮の方法としてサポートツールの導入もご検討ください。

記事発行日: 2024年7月9日

\オンデマンド配信中/